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台頭する保護主義と翻訳

関税の引き上げや障壁をつくることによって自国産業を守ろうとする、いわゆる保護主義が世界各地で台頭し始めています。この保護主義については、かつて世界の様々な国が輸入関税を相次いで引き上げた結果、

世界の貿易量が極端に縮小する中で、1929年の世界大恐慌が発生したという歴史的事実があります。しかし、この様な様々な国の保護主義的傾向は、今回の米国のサブ・プライム問題に端を発する金融危機によって、世界経済が減速する中で、様々な国や地域で起き、まさに経済ナショナリズム化が起きようとしています。

例えば米国では、景気刺激策で実視するプロジェクトについては自国製品の使用を義務づけるバイ・アメリカン条項を導入、EUでは、穀物関税の引き上げ、乳製品の輸出補助金を再導入、IT製品の課税分類変更による実質的な関税の引き上げを検討中、中国では、豆かす、豚肉の輸入関税の引き上げ、中国の地方政府による国産品の優先的な調達、ロシアでは、自動車の関税引き上げ、中古車も関税引き上げ、鉄鋼製品、液晶テレビ、中古農業機械の関税引き上げ、インドでは、一部品目の関税引き上げ、一部鉄鋼製品への強制規格の導入など、様々な保護主義的な貿易措置が実施または検討されているわけですが、このような措置は、他の国からの報復措置を受けやすく、さらに貿易量の縮小を招くこととなり、世界全体にとつてもマイナスの結果をもたらすと思います。

しかし、経済のグローバル化の進展や各国共に他国に食糧や各種資源を相互依存する構造となっている現代において、1929年の大恐慌時の経済のブロツク化へ進む懸念は少ないと思いますが、現在の世界を取り巻く経済危機が収束をしない限り、自国の経済・産業を優先するというバイ・ローカルともいえる内向きの取組はしばらく続くのではないかと思います。就任2か月の米国オバマ大統領は、チェンジ(改革)実現までは何か月・何年もこれから我慢をすべきで、すぐの成果を期待すべきではないと、「継続の哲学」を語っています。

もし、世界中の経済情勢が徐々に好転しなくて、それぞれの国が保護主義に向かうという状態だけは避けて欲しいと思います。なぜなら経済活動が長らく停滞したり、内向き志向状態の時には、翻訳需要も減少してしまいます。

長年多言語の翻訳を致し、間接ながら経済情報や技術の開発や移転の動向を注視してきました経験から、世の中が動態化している時には翻訳需要も旺盛で、逆に動きが静態化してしまいますと翻訳需要も減少停滞化し、長いトンネルの中に入った状態となり、なかなか外に出ることが出来なくなります。翻訳は、経済の鏡と考えていますと以前のブログでも述べてきましたが、今そのことを実感いたします。

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